山田耕作童謡100曲集

兎と狸   野口雨情 作詞

 

カチカチお山に 誰がいる

  兎がこっそり かくれてる

ボオボオお山に 誰がいる

  狸が一匹 かくれてる

カチカチお山は 大火事だ

  ボオボオお山に 火がついた

狸が熱くて 逃げ出した

  兎が後から 追っかけた

 

 

耕作百言

 此處に一つの湖水があると假定する。山の懐にかき抱かれた

湖の面は、死んだように静かに、重なり合った山の屏風と、山

頂にへりどられた青空を映してゐる。が、好晴の日に見た水の

面が鏡のやうであるからといって、湖は生命のないもの、静止

的なものだと論断するのは乱暴である。一陣の風にも湖は全的

に躍動する。躍動する水面の波動は舞踊であり、その波の風に

鳴り、岩に砕け、岸に打ち上げる響きが音樂なので、換言すれ

ば、音樂と舞踊とは、本質的に、一つの湖心から生まれた、姉

妹以上に縁の近い双生児なのである。